今回は、2026年9月27日に参加した岐阜県主催の「親子環境学習 脱炭素社会ぎふを支える人づくりツアー」の様子を紹介します。

岐阜県下呂市金山町を流れる菅田川。

いっぷく図書図鑑センターのすぐそばを流れるこの川は、子どもたちにとって「魚を捕まえて遊ぶ場所」であると同時に、たくさんの生きものや、昔から続く地域の暮らしを知ることができる場所でもあります。

これまでこのブログでも、菅田川のガサガサで見つけたアユ、オイカワ、ホトケドジョウ、アジメドジョウ、カワヨシノボリ、アカザなど、さまざまな川の生きものを紹介してきました。

テーマは、

「このオオサンショウウオはどこから来たの?高校生から学ぶ交雑種問題」

でした。

川に入って生きものを探す「ガサガサ」から始まり、オオサンショウウオの調査、そして魚皮拓やアジメドジョウの話まで。

一見すると別々に見えるこれらの話は、実はすべて「川と人とのつながり」という一本の線でつながっています。

今回の活動では、実際に菅田川へ入り、親子で川の生きものを探しました。

川底の石を動かしたり、網を入れたりしながら、水の中をのぞいてみます。

子どもたちにとっては、

「魚がいた!」

「この魚は何?」

「ドジョウみたいだけど、ちょっと違う!」

という発見の連続。

川に入ると、普段は図鑑の中にいる生きものが、一気に身近な存在になります。

菅田川では、これまでのガサガサでもアユ、オイカワ、ホトケドジョウ、アジメドジョウ、カワヨシノボリ、アカザなどが見つかっています。

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魚の名前を図鑑で調べるだけでも十分楽しいのですが、

「この魚は、どんな場所に住んでいるんだろう?」

「何を食べているんだろう?」

「昔の人は、この魚をどうしていたんだろう?」

と調べていくと、川の世界はさらに広がっていきます。

菅田川の魚を紹介する中でも、特に興味深い存在がアジメドジョウです。

アジメドジョウは全長8~10cmほどの細長い魚。

頭には細かな黒い点があり、口は吸盤のような形をしています。

岐阜県水産研究所によると、アジメドジョウは県内の多くの水系の上流から中流域に生息し、付着藻類や水生昆虫を食べています。

そして、この魚にはもう一つ大きな特徴があります。

それは、岐阜の人々の暮らしと深く結びついてきた魚だということです。

昔から「アジメ」と呼ばれ、煮付けや甘露煮、焼き物などに利用されてきました。

下呂地域では、朴葉寿司の具材としても知られています。

つまりアジメドジョウは、

「川にいる魚」

であるだけではなく、

「地域の食文化を支えてきた魚」

でもあるのです。

今回の学習をきっかけに、あらためて注目したいのが「魚皮拓」です。

魚皮拓は、魚の体の形や模様を紙などに写し取ることで、魚の姿を記録する方法です。

写真とは違い、魚の輪郭や鱗、ひれ、模様などをじっくり観察しながら、その魚の特徴を残すことができます。

魚を「見る」だけではなく、

「どんな形をしている?」

「鱗はどうなっている?」

「ひれはどこについている?」

「この模様にはどんな意味がある?」

と、細かな部分まで観察するきっかけになります。

いっぷく図書図鑑センターでは、これまでにも魚皮拓や昔の漁具などを紹介してきました。

ここで面白いのは、魚皮拓が「生きものの観察」と「昔の人の暮らし」の両方につながっていることです。

昔の人にとって、川は遊び場であると同時に、食べものを得る場所でもありました。

魚を捕るための道具を作り、川の流れや魚の習性を知り、季節に合わせて魚を捕る。

そこには、長い年月をかけて積み重ねられた地域の知恵があります。

以前、いっぷく図書図鑑センターで開催した魚食文化の展示では、アジメドジョウを捕るための「あじめ穴漁」や「登り筌(のぼりうけ)」など、昔ながらの漁具も紹介しました。

現代では、魚を捕るというと網や釣りをイメージすることが多いかもしれません。

しかし昔の人は、魚の習性をよく観察していました。

どこに魚がいるのか。

どの季節に動くのか。

どんな場所に集まるのか。

その知識をもとに、地域の川に合った漁法を生み出していたのです。

これは「昔の道具」というだけではありません。

川の環境と魚の生態を知るための、いわば昔の自然観察の道具でもあります。

アジメドジョウは、どこにでもいる魚ではありません。

岐阜県水産研究所によると、アジメドジョウは上流から中流域に生息し、冬になると伏流水が湧き出す場所の礫の中に潜って越冬します。

また、環境省レッドリストでは絶滅危惧Ⅱ類に選定されています。

つまり、アジメドジョウを見ることは、

「そこに魚がいる」

というだけではなく、

「その魚が暮らせる川の環境が残っている」

ということにも目を向けるきっかけになります。

川底の石、水の流れ、水温、餌になる藻類。

一匹の小さな魚を入り口にすると、川全体の環境が見えてきます。

今回の環境学習で、もう一つ大きなテーマとなったのがオオサンショウウオです。

岐阜県内にもオオサンショウウオが生息しており、流水のある河川の中上流部を主な生活場所としています。

今回の学習では、実際に見つかったオオサンショウウオについて、

・体長や体重の測定
・生体検査
・在来種と交雑種についての確認
・マイクロチップの挿入
・調査結果の発表

などが行われました。

普段、川遊びをしているだけではなかなか見ることのできない調査です。

子どもたちにとっては、

「オオサンショウウオがいる!」

という驚きから、

「この個体はどこから来たの?」

「在来種なの?」

「交雑種って何?」

という疑問へと、一歩進んで考える機会になりました。

今回特に印象に残ったのは、高校生のみなさんが調査や発表の中心となっていたことです。

自然について学ぶというと、大人から子どもへ「教えてもらう」という形を想像しがちです。

でも今回は違いました。

高校生自身が生きものについて調べ、実際の調査に関わり、その結果を地域の人や親子に伝えていました。

これは、地域の自然を「守ってもらうもの」ではなく、

「自分たちで調べ、考えて、次の世代につないでいくもの」

として捉える、とても大切な学びだと感じました。

菅田川でのガサガサは、最初は単純な遊びに見えるかもしれません。

網を持って川に入り、

「魚を捕まえた!」

と喜ぶ。

でも、そこから始まる疑問があります。

この魚は何?

どこに住んでいる?

何を食べる?

昔の人も捕まえていた?

食べられていた?

数が減っているの?

川の環境が変わったらどうなる?

こうして一匹の魚から、川の環境、地域の歴史、食文化、生物多様性へと学びが広がっていきます。

これこそ、自然の中で学ぶ面白さなのだと思います。

今回のイベントのテーマは「脱炭素社会ぎふを支える人づくり」。

一見すると、オオサンショウウオやアジメドジョウと「脱炭素」は少し離れた話に感じるかもしれません。

でも、岐阜県がこのツアーで森・里・川・海での自然体験や保全活動を通して、流域のつながりや環境問題を考えることを目的としていることを知ると、その意味が見えてきます。

自然環境を知ること。

地域の生きものを知ること。

川と人の暮らしのつながりを知ること。

そして、自分たちの生活が自然環境とつながっていることに気づくこと。

環境問題は、遠い場所で起きている大きな問題だけではありません。

毎日見ている川や、そこに暮らす小さな魚も、私たちの暮らしとつながっています。

いっぷく図書図鑑センターは、もともと菅田小学校の図書室でした。

現在は、地域の自然や生きもの、昔の暮らしについて、本だけではなく実際の体験を通して学べる場所になっています。

図鑑で魚を見る。

↓

川へ行って魚を探す。

↓

実際に魚を見る。

↓

名前を調べる。

↓

魚皮拓や漁具を見る。

↓

昔の人の暮らしを知る。

↓

魚食文化を知る。

↓

川の環境について考える。

こうして考えると、菅田川そのものが大きな「自然の図鑑」のようにも感じられます。

自然体験で大切なのは、魚の名前をたくさん覚えることだけではありません。

「なぜここにいるんだろう?」

「昔からここにいたのかな?」

「この川が変わったら、この魚はどうなるんだろう?」

そんな疑問を持つこと。

そして、自分で調べたり、誰かに聞いたり、実際に見たりすること。

その積み重ねが、地域の自然を大切にする気持ちにつながっていくのだと思います。

今回の「親子環境学習 脱炭素社会ぎふを支える人づくりツアー」は、そんなことを改めて感じる一日でした。

菅田川で見つかる小さな魚。

昔から受け継がれてきた漁具。

魚皮拓に残された魚の姿。

地域の食文化。

そして、オオサンショウウオを調査する高校生たち。

すべてが一本の川でつながっています。

これからも、いっぷく図書図鑑センターでは、菅田川の生きものや、下呂・金山地域に残る自然や文化を、子どもたちと一緒に「遊びながら、見て、触って、調べて」伝えていきたいと思います。

川で魚を捕まえる。

魚の名前を調べる。

魚の姿を観察する。

昔の漁具を見る。

魚を食べてきた地域の歴史を知る。

そして、今を生きる生きものについて考える。

「魚を捕る」という小さな体験から、自然、生物多様性、食文化、地域の歴史、環境問題まで、学びはどこまでも広がっていきます。

菅田川での一つ一つの発見が、子どもたちにとって地域の自然を未来へつなぐきっかけになればと思います。